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「格子」 池田郁英2015.10
『格子』
茶室や京町屋・数寄屋建築には、それらを特徴づけるいくつかのデザイン的要素があり、その
一つに格子があります。
外観的にそのリズムが美しいし、外光が創りだす室内のシルエットに息を呑みます。
差し込む光を和らげるし、プライバシーの保護、防犯にも威力を発揮します。
「格子」は、機能に優れ、デザイン的にも素晴らしい伝統的な和風アイテムです。
平安遷都以来、日本の文化と権威の頂点であり続けた京都。
それだからこそ歴史上、戦乱を勝ち抜いた軍事勢力に何回となく蹂躙されました。
おもてを行進する覇者たち。京の民衆は格子の裏でじっと息を潜め、外の様子をうかがう。
でも覇者たちからはその姿は見えない。
彼らの乱暴狼藉を恐れ、民衆は身を守りながらじっくり事態を観察する・・・民衆の知恵なの
でしょう。
そういうところから派生して、京都、あるいは京都人に対する少し心外な「評価」が語られる
のかも知れません。
京都人は陰で何を考え、何を噂しているか分かったものじゃない、表と裏がある・・・。
格子は繊細で美しくて、京都らしい・・・そんな風に鑑賞するだけではなく、その格子に込めら
れた京都の苦難の歴史、その中で培われた京都人の知恵、気質に想いを馳せるのも楽しいことです。
取締役 社長 池田 郁英