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「伝統」 池田郁英2015.08
『伝統』
私は、創業が戦前で今もなお店を続けているおでん屋さんにはまっています。
真夏の暑い日でも、汗と一緒に食するおでんは格別です。
程よく味の染み込んだ、このまったりした味はどこから来るのでしょうか。
店主曰く
「何も新しいことはしていない、スープを毎日少しずつ足す、季節の具を同じ鍋、
同じスープに放り込んでしっかり煮込むだけ、ほんと単純な毎日の連続ですよ」
謙虚な店主は、多くは語りません。
2代、3代にわたってのなじみ客がたくさんいると言うこの小さなお店。
おでん、極めてシンプルな料理にも何かしら店主独自の哲学が隠されているような気がします。
吉村建築事務所はお陰様で創業70周年を迎えようとしています。
私たちの作品にかもし出される「吉村らしさ」とはいったい何でしょうか?
時代が変われば、スタッフも、デザインリーダーすらも変わっていきます。
しかし、「吉村」と言う器の中で、少しずつ入れ変わっていくスタッフは、必ず何かを残し、それらは時代を超えて引き継がれていきます。
先ほどのおでんの話とよく似て、スープを一挙にとりかえれば全てが失われる、少しずつがポイント。
「吉村」の味が染み込んだ器のなかで、時代の空気をたっぷり吸い込んだスタッフたちが、様々な具を丁寧に煮詰め作品に仕上げていきます。
私たちが目指す個性である「優しさ」も、「吉村」らしさもここから生まれます。
取締役社長 池田郁英
(イメージ写真はインターネットフリー画像より)